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転倒したバイク

帰宅困難という最大のリスクを回避する

サーキット走行において、多くの初心者が抱えるジレンマが自走で行くか、車に積んで行くかという問題だ。自走は手軽でコストがかからないように見えるが、SE的な視点でリスクアセスメントを行うと、これほど脆弱なシステム構成はないことに気づく。なぜなら、移動手段と競技車両が単一障害点になっているからだ。マシンが走行不能になれば、即座に帰宅不能という重大インシデントが発生する。今回は、トランポ運用の優位性と、その導入コストについて論理的に解説する。

自走のリスクアセスメント

自走派が抱える最大のリスクは、転倒による自走不能状態だ。サーキットでの転倒は、公道事故のような大破ばかりではない。スリップダウンでブレーキレバーが折れたチェンジペダルが曲がったといった軽微な損傷がほとんどだ。

しかし、たったレバー1本が折れただけで、そのマシンは公道を走る法適合性と操作性を失う。自走で来ていた場合、この時点で詰む。レッカーの手配、帰宅手段の確保、そして後日、遠方のサーキットまでバイクを回収に来る手間。これらにかかるコストと時間は甚大だ。

また、体力的なリソース管理の観点からも自走は非効率だ。往復のツーリングで体力を消耗し、肝心のサーキット走行で集中力を欠いては本末転倒である。疲労は判断ミスの主因となる。安全に楽しみ、確実に家に帰るためには、移動と走行のリソースを分離することが、最も有効なフェイルセーフとなる。

トランポの費用対効果

車を持っていないレンタカー代が高いというコストへの懸念に対するロジックを提示する。
確かにレンタカー代(24時間で7,000円〜10,000円程度)は発生する。しかし、これを掛け捨ての保険兼快適性への投資と捉えれば、ROIは極めて高い。

トランポがあれば、万が一マシンが大破しても、そのまま積んで帰宅できる。雨が降れば車内で待機でき、ツナギや工具、折り畳み椅子などの大量の機材を運搬できる。夏場のエアコン、冬場のヒーター完備の休憩所が確保されるメリットは計り知れない。
何より、転んでも帰れるという心理的な安心感が、コース上での思い切ったライディングを可能にする。守りの姿勢で縮こまって走るより、リスクヘッジをした上で攻める方が、スキルアップの効率も良い。レッカー代数万円のリスクを、数千円のレンタカー代でヘッジする。これは極めて合理的な判断だ。

積載というソリューション

ハイエースのような大きなバンが必要なのでは?という誤解があるが、実は軽バンで十分なケースが多い。リッターSSや大型ネイキッドであっても、助手席を倒して対角線上に積載すれば、多くの車両が収まる(※車種とサイズによる事前検証は必須)。

必要なイニシャルコストは、バイクを車に載せるためのラダーレールと、車体を固定するタイダウンベルト2〜4本のみ。これらは一度買えば長く使える資産だ。
レンタカー店で軽バンを予約し、前日の夜に積載を済ませておく。当日は車で移動し、現地で降ろして走り、終われば積んで帰る。一度このトランポ運用の快適さと合理性を体験すれば、二度と自走には戻れないだろう。それは、ツーリングの延長ではなく、モータースポーツという別のレイヤーへ移行した証でもある。